幻の銘酒、紅一点 平内さんを思う

紅一点
周防国石城山 日本(やまと)神社に奉納された「紅一点」


 私が若い頃親しくしていただいた方に、長谷川平内さんという方がいました。『鬼平犯科帳』の火付盗賊改方、長谷川平蔵と一字違いですが、こちらは『鬼平』ならぬ『福平』でおたふく顔の優しい方で、親しみをこめて『平内さん』と呼ばせていただいていました。

 平内さんの家は山形県の置賜郡で江戸時代から続く造り酒屋でした。戦中、米不足から清酒の代用品として合成酒が流行り、戦後には合成酒に米を加えた「三倍醸造酒」が日本酒として大量に出まわりました。
 戦後は極端に物資が欠乏し、メチルアルコールに紅茶で色を付けてウイスキーとして販売したという話も残っている位で、酒造メーカーも三倍醸造酒でも何でも、酒と名の付くものなら売れといった時代だった様です。
 平内さんはそういった酒造組合のやり方に反対して、米だけで作った清酒以外は日本酒ではないと対立して、組合を除名されました。

 今の時代では信じられないでしょうが、当時は酒造組合を除籍されると酒屋などに酒を卸す事が出来ませんでした。農家も農協を通さなければ野菜が売れないという時代でした。
 現在ならインターネットや通販など色んな販売方法がありますが、当時は規制も厳しく個人で販路を広げるのは大変な困難と苦労があったと思います。
 それでも平内さんは米だけの酒、純米酒を造り続けました。

 平内さんの作る清酒の商標は「文乃字正宗」と言って、商品名に「紅一点」という清酒があり、日本酒では珍しいアルカリ酒で、その製法は秘密だといっていました。
 このアルカリ純米酒には十年、十五年と寝かせた秘蔵酒があって何度かいただいた事がありました。口に含むとその強烈な味わいは醸造酒ではなくスピリッツかと見間違うものでした。

 晩年の平内さんは米麹から酵母菌によるバイオの研究をして、人体に良い酵母菌を使った食品の開発に取り組んでいました。
 七十をこして癌を発病しましたが、ある信念を持ち延命治療は一切受けませんでした。亡くなられのは七十二歳だったと思います。

 もう30年も前の事、平内さんが錦の織物に包まれた「守り刀」を見せてくれました。この場合の「守り刀」というのは護身用ではなく、邪や魔物から身を守る霊的な「刀」を言います。平内さんは世界が三次元だけではなく多次元であると信じていました。
 その錦の織物を解くと出てきた「刀」は桃の木で造られた剣でした。桃は古来より邪気を祓うと言われています。
 清浄感のある白木で反りのない直刀は古来神道(カムナガラ)の直き(なおき)心を現しているかのようでした。
 この「剣」は邪や魔物から身を守るだけではなく、己に邪(よこしま)な心がわいた時、その邪な心を切るものでもあります。

 昨日は桃の節句、平内さんの事を書こうと思ったのは、桃の木の「守り刀」の思出からでした。

コメント

これって30年前に飲んだ山形の紅一点のこと?

たまたまネットの中に見つけた「紅一点」。
これは、私が仙台で暮らしてた頃、知り合いに誘われて訪ねた山形の、(既に当時でも)幻の酒「紅一点」のことでしょうかね?

一晩泊めていただき、心ゆくまで美酒を味わった記憶があります。

当時でも流通に乗っていなかった紅一点は、その知り合いを介して、仙台時代、いつも飲ませていただいた、とにかく美味しい酒でありました。

もし、そのことだったら・・、
懐かしい!!の一言。

そして、また一度、あの酒にめぐりあいたい、という二言め。

2017/12/13 (Wed) 19:51 | ひたちなかもん #- | URL | 編集
紅一点です

紅一点をご存じとは、嬉しいです。
今では本当に幻の酒になりました。
もう一度味わいたいものです。

2017/12/13 (Wed) 22:33 | 店主 #UkYTjDRg | URL | 編集

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